学校と地域の融合・冬季フォーラム2002 in 富士山のまち富士宮

『学校をコミュニティ−づくりの基地に!!』


     対  談  者   ○藤井 國利  富士宮市教育委員会教育長
                ○西阪   昇  文部科学省高等教育教育局専門教育課長
     コーディネーター ○岸  裕司   学校と地域の融合教育研究会副会長


 

・全国20数都道府県から本フォーラムに参加をいただいたことをうれしく思う。
・本対談は当初の予定にはなかったが、ビッグ対談ということで特別に設定した。
・テーマは「学校をコミュニティづくりの基地に〜学社融合と施設の多機能〜」
・生涯学習社会の形成にあたっては、学校の施設そのものをどうのように活用していくかが大事であり、国の方も施策を様々に打ち出している。
・そこで、文部科学省高等教育局専門教育課長・西阪さんより、学校の施設を今後どのように活用していったらよいかを伺いたい。
・もうひとかたは、富士宮市の教育長藤井さんに御登壇いただいて、学社融合を具体的にどのように進 めていったらよいか、また富士山学習のような実践ができていく過程を詰めていきたい。
・自己紹介をかねてお願いします。

西阪

・これからの学校を考えるとき、社会の中での学校づくりが叫ばれている。戦後これまで、若いとき学び、卒業し、働き、リタイアするという直線的な人生を歩んできたが、成熟した社会になって行く中で、違う生き方が必要になってきた。
・学校の教育機能は、若い人達が社会に出るまでの充電期間というだけでなく、学びたい意欲を持つあらゆる年齢の人達にとって学ぶ場−それが学校でないか。
・その背景には、生き方への問い掛けが生涯学習の言葉に秘められているのではないか。
・生涯教育から生涯学習へと変わってきた背景に、「まず学習者の立場を考える」という発想の転換があった。教育で一番大事な事は、学習する人の自発性・主体性。これが重要だという認識が高まったということである。
・閉ざされた学校から、機能が学校外へ広がっていく。これからは学校も変わってもらいたいと思う。

藤井

・富士宮市では、平成5年に市教委で生涯学習計画を策定した。生涯学習という言葉がまだ十分市民に理解されていないことから、まず機構改革に着手した。
・平成8年、これまでの社会教育課と女性青少年課を統合し、生涯学習課を新設、生涯学習推進担当課長補佐を学校の教頭から任用した。まず組織を変え、人のつながりを大事に進めていき、このような中から学校・社会教育融合事業が生まれた。
・学校教育の役割は授業が中心である。ここ十年余、学校の授業改善を中心に市内全体的な取り組みをしている。
・たとえば、全体研修会を設けて全教職員が、共通テーマをもったり、一堂に会して教科の研究授業に取り組んでいる。さらに小中学校が富士山学習に励んでいる。
・富士山学習を通して、地域を知る事は、地域を愛することにつながる。それが誇りとなり、ふるさとを大事に思う心で世界に飛び込んでいけると思う。
・富士山学習は、「地域を知りたい」ということからスタートしている。
・「授業改善」と「富士山学習」の二つの大きな流れが、富士宮市の教育の重要な柱となり、学社融合への広がりにも結び付いている。

 

・これから学校を開いていくことには、施設などのハード面と授業などのソフト面の課題があるが、特に開く側の主体者−教職員が開くという意思を強めてきた時代の流れを考えると、ソフト面は重要だと思うが、国の今後の方向性を伺いたい。

西阪

・学校を開くという意味には二つの流れがある。
・一つは子供たちの教育について学校だけが担うのでなく、地域の協力を得て授業・教育に広がりを持たせ、子供たちを育てていくということ。
・もう一つは市民が学びたいとき、学校という教育的な財産をできる限り活用してもらうということ。
・前者にはいろいろな形があると思うが、ここでぜひ各学校でやって欲しいというのは、「学校図書館機能の充実」という点で、市民にもっと深く係わってほしいということ。子供たちの本離れはイコール地域離れ。学力の低下が叫ばれているが、私は計られた学力よりも、本当に知的な面への子供たちの興味・関心が低下していることが、将来を考えたときに重要な問題ではないかと感じている。
・情報化社会の中にあって、活字媒体のみに固執する必要はないが、人間が新しいことをやっていくとき、活字を通して考え、知識を得ることは今後も無くならないと思う。そうしたときに、学校図書館がなかなか活用されていない。知力の授業という面で十分活用できていない。
・本の楽しさを伝える機会を子供たちに与えるという意味で、学校だけでなく地域の貢献を受けた上で、もっともっと学校図書館を活用するといいうことが考えられる。
・後者について、これから土・日曜は授業がないわでだから、学校施設をもっと使っていただきたい。大学では公開講座を開いて興味のある人達に活用してもらっているが、小中学校でもそういうことを行ってもよい。
・東京都では、都立高校はすべて年15時間の開催が決められているが、これは教委側の行った事例だが、地域主体で学校を活用し、学びたい人達が集まってくれば学校も変わっていくと思う。

 

・生涯学習の観点からは、富士宮市の学校が必要としている地域の教育力、地域が可能性を見出だしたい学校の機能と兼ね合わせについて、今後の方向性あるかと思うが。

藤井 

・地域を学ぶためには、地域の専門家にお願いする。市の予算「学校・社会教育融合事業費」を使ったり、あるいはボランティアで講師をお願いしたりという形が増えているが、子供たちと一緒に勉強している中で将来を見つめながら喜びを感じるという表れが見え始めている。つまり「教える」ということから「子どもへの期待感」へと広がってきている。これが学社融合の本質的な力を生み出しているのではないか。
・学校の教育力を地域にどう生かせるか。教職員には専門性を生かして趣味的に深く勉強している場合もあり、その教諭が公民館講座の講師になる、あるいは学校で地域の人を対象とした講座を設けているところもある。
・ある中学校では、夜間講座として教諭が講師となって、「海外旅行に役立つ英会話」「山歩きの醍醐味」「これからの学校と教育課程」などの講座を開講している。
・学校図書館の件ですが、富士宮市では本年度より「読書と読み聞かせ推進事業」を展開している。市内には28団体400人読み聞かせボランティアがすでに10年前から小学校を中心に活動している。本事業は、このような人達と行政とで取り組んでいるもので、まさに学社融合といえる。
・具体的な取り組みとしては、土・日曜は休みでも読書ボランティアを公民館に配置して図書コーナーの活用を図るとか、その図書の入れ替えはボランティアが市民の要望を聞いて中央図書館に依頼して行っている。図書館と公民館との人的・物的な連携、さらには学校図書館との連携が生まれる。
・また、司書教諭も市内全校に配置して、定期的な研修を重ねて「本が何冊」という感覚でなく、「どのように本に親しめるか」という点を大事にしたい。

 

・今後、学校を開いていくとなると、池田小事件を想像せざるを得ないが、学校の安全に対する施策、あるいは安全意識などについてどう考えるか。

西阪

・開かれた学校づくりと学校の安全管理の徹底は別なことと考えている。様々な形で学校を開いていくことは問題はなく、その過程として外部者の侵入が増えてくる。この点について、学校側がチェック体制をしっかりすることが第一である。
・これから施設をつくる学校では、様々な人が活用することを考えて施設をつくる必要がある。例えば、図書館だったら玄関に一番近い場所にするとか子どもたちの教室には外部者が入れないように工夫をし、両面から学校づくりをしていただきたい。

藤井

・富士宮市では、池田小の事件が起きたとき、早急に校長会を開き、警察との連携を深め、地域も一緒になった安全対策会議を設置した。そのとき、校門の開閉における外部侵入問題などが取り沙汰されたが、結論としては、「学校を閉じないでくれ。子どもの安全は自分達(地域)で守から、もっと地域と親しみやすくして欲しい」という強烈かつ圧倒的な集約意見であった。
・その心を標語「子どもの安全はみんなの目で」にして各学校に配布した。各学校には防犯ブザーを設置する予定だが、地域のみなさんが「守るぞ」という心を大事にした教育を進めたい。
・学校を開こうとする地域の強い要望があり、学校を思う心で学校を守りたい。これは鉄にさくよりも強い。
・真に学校を開くとは、学校経営や教育課程作成に保護者や地域の人達に入っていただき、運営には子どもの参加も必要。学校が作成したものを説明する段階では不十分。
・地域のための学校、地域に応えるためにも、地域、子ども、学校が一体となっての学校づくりの実現を目指したい。


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