平成14年度 −春季融合フォーラムin 紫波―
学校週5日制を融合で楽しくすごそう!
日 時:平成14年6月1日(土)
         会 場:紫波町中央公民館           

基調講演「学校週5日制を融合で楽しくすごそう」要旨
講 師:学校と地域の融合教育研究会会長 宮崎 稔
(習志野市立大久保東小学校長)
  

〇 開会のあいさつ

 紫波町教育委員会と共催でフォーラムを開催することができてありがたく、うれしいことである。教育改革を実践・研究する人たちが、自らの意思で集まってくれた。融合研のモットーは、できる人が、できる時に、無理しないで、楽しく。

○ 基調講演
2年前にも紫波町を訪れた。「経塚」と「もち米」が印象に残った。歴史があり、子どもたちを大切にする町であるように思われた。
教育が変わろうとしている今、まちづくりの方向を考える、いい機会である。

今回の教育改革が2ヶ月経った。今回の教育改革の目玉は何か。
「学校週5日制」とか「総合的学習の時間」と言われているが、根本理念である「住民の意識で教育を選べること」「市民の手で学習を作っていけるということだ」と考える。


古くは「道徳」で、10年前は「生活科」というように、今までずっと改革の目玉を国で決めてきた。

今回は、国が変わる、校長が変わる、教育が揺れ動き、変わった。住民の意思が入った教育改革、これは住民自ら実践できる。たとえば、
  @ 高齢・少子化の町だから、高齢者と子どもが一緒の教育を中心に据えよう
  A 古い歴史のある町で、城跡で、ふるさとを愛する歴史教育を進めよう
  B 伝統芸能の残る街では、学校教育の中に伝統芸能学習の場を作ろう
  C 紫波町で、たとえば、インターネットを使った学校交流の町づくり

町の教育の特色を何にしようか考える。今までは、最初に看板ありきで、次に特色を考えてきた。 地域にあった特色ではないので、画一の学校ばかりできた。これからの教育はこれでは駄目である。 特色というものは自然にできていくものだ。 例えば、それぞれが農作業で情操を育てよう、体力つくりをしよう、音楽しよう、高齢者と一緒に活動をしようと思っても、それぞれに得意な先生がいない。それならば先生に代わる人たちを連れくればよい。地域には能力がある人がたくさんいる。学社融合的活動が重要だ。

地域が学校に入る追い風のときに、池田小学校の事件(H13.6.8)が起きた。それ以降の学校の対応が2つに分かれた。
@ できるだけ塀を高くして戸締りをする。刑務所のように入ってこられないようにしようという対応。
A 安全を最優先させたところが学校、もっと学校に地域の人を入れ、融合の愛の輪で子どもを守っていこうとする対応。


Aの例、7年前のことになるが、秋津小学校の3年間、開かれた学校が大きな心配もなく、住民も子どもも、お互いが一緒になって安全をつくっている。
@の例、同じ習志野市内の大久保東小学校に着任した。ここでは、下校後校門が閉められる。この学校で、5月29日に誘拐未遂事件が起こった。近くの空き地で低学年の女の子が待ち合わせをしていた。(3:30頃)最初にきた子が車の男に押し込まれ、15分間市内を引きずりまわされた。あまりにも女の子が泣き叫ぶものだから、犯人は降ろして立ち去ったというもの。

何とか学校と地域が一緒に活動をしたい。放課後の学校開放をすぐにでも始めよう。先生が駄目なら地域の人が守ってあげようよ。

「学社融合」をやさしい言葉で言うなら、秋津では「仲良し」って言えるのではないか。学校と地域が仲良しになる。そうすれば、いいことが行われる.

《秋津小学校のビデオ視聴=5分=》
 19年前に秋津の町が誕生した。現在は当時の3分の1の児童数(425名)空き教室ができた。それを地域の人に開放した。今ではその教室を利用して、定期的利用サークルが26ある。例えば
  @ 合唱サークル、(午前9時から午後9時まで)
  A 陶芸愛好会(PTAじゃなくても、地区民だれでも参加できる。)
  B 演劇サークル(学校を見せたくない⇒見せる⇒先生もよくやっている。)
  C 将棋クラブ(住民が指導する)
  D 料理クラブ(主婦が指導)
利用者が自主管理し、かぎの貸し出しを行っている。子どもたちが横になって自由に本を読める「ごろごろ図書館」もつくった。
運動会は、学校、地域、子ども会の三者共催(合同)の運動会
地域の人が、余裕教室を使って、学校に入り浸る。授業の中にも取り入れる。 有馬元文部大臣の話でも、秋津のようにしようといっている。

今の大久保東小学校、児童数の増加でプレハブ教室、余裕教室はない。余裕教室がなくてもできる学社融合を目指している。学校支援ボランティアを立ち上げ、市民の中から盛り上げようとしている。放課後は俺たちが見ているから、先生方は安心して職員会議をしていてよという雰囲気を作っていきたい。

土曜日に活動したい人集まれ!
 @ 図書館の管理をしてやろう。本を読みたい人への受け皿になろう。
 A 校庭で、グランドゴルフやソフトボールを子どもたちと一緒にやりたいな。
 B 体育館で、ニュースポーツを子どもたちと一緒にやろう。
 C 教室で、囲碁・将棋を子どもたちと一緒にやろう。
ケガをして、管理責任を問われるのはいやだ。そこで、ケガをしても他人の責任としないようにしよう。
放課後の開放(管理は関係がない、先生がいればなんでもできる)
 @ 家庭科室を使って外国の料理を紹介する。在住外国人の仲間づくりの場として支える。
 A 学校まつり⇒客で参加するのもボランティア、遊ぶだけでもボランティア
   無理のない範囲で長続きさせるよう、責任を問われない形でやっていこう。

栃木県鹿沼市石川小学校
 学校が地域のたまり場となり、お母さん方がお茶のみに集まってくる。

学校と地域が仲良く(学社融合)のメリット
 毎年十数名いた不登校の子どもが、学校開放したとたんにゼロになった。その子どもたちが、「だって学校が楽しいんだもん」という。先生ばかりではなく、変なおじさんや面白いおばさんがいて、癒される。

子どもたちは、小学校の中では、一日中担任の先生と過ごす。家庭ではお母さんが中心(お父さん は忙しい)いろんな大人と触れ合うチャンスが少ない。学校開放(融合)では、学校に来れば触れ合 いのチャンスがあり、子どもたちのとってとてもいいことだ。


@ 現役のお父さん方にとって〜おとなの仲間作りが学校でなされる。
   会社に忙しいサラリーマンは、同僚との付き合いばかり、町内会などにも参加でき、老後の楽しくすごせるチャンスとなる。            
A 高齢者にとって〜子どもたちにとって、家が近いから、いつでも教えてもらいに行ける。まだまだ能力を発揮できる。町にとってもいい存在。生き甲斐を持つことができる。                   
B 行政にとって〜今までは高齢者を無視した考え、町の隅に老人ホームを作り、バスで運べば、生き甲斐が持てるという施策、町の中で子どもと触れ合うことにより、生き甲斐を持つことができる。施設を作るより、生き甲斐に通じる。                      
C お母さん方にとって〜合唱サークル、白髪の人から若い人まで幅広く集まる。練習の合間に、世間話や子育て相談ができる。            
D 中高生にとって〜教室の中に折りたたみ式バスケットリングを置くと、勉強の合間に中高生が遊びにくる。

                    
このように、メリットは子ども、現役の大人、高齢者、若い母親、中高生、にまで広がる。学校と地域が仲良くすれば、いいことがたくさん生まれる。

朝9時から、夜9時まで自由に使える。午後5時になると、学校のシャッターを下ろす。  それ以降は別の入り口からはいる。(住民が10個のかぎを、先生方が来ることなく、自己管理をする。)  子どもも集まって来る。地域の仲間づくりの場となる。


先生方にとっても、管理のためわざわざ休日に学校に来なくてもいい。休日がつぶされない。ウサギやニワトリの餌やりに来なくていい。へちまやひまわりの水遣りに、来なくてもいい。地域の人がたっぷりやってくれる。地域の人が、先生いいよ、俺たちも楽しく過ごせるから。自分の時間 を、自分の地域で過ごしてよ。


昔の時代〜土日に出てくれる先生がいい先生、夜遅くまで働いてくれる先生が、いい先生だった。
今の時代〜学校教育のことは学校で、授業においては、先生方はその道のプロしっかりとお願いします。先生方ができないことは、地域の人が住民として参加をする。
だから、先生方は、自分の地域で住民として社会参加をしてください。自分の住んでいるところ で、町内活動をしてください。老後のための仲間作りもできますよ。さもないと、つまらない老後になるよ。


メリットは、先生方にも地域にも双方にある。子どもたちも喜ぶ。地域の人とのメリットがあり、学校の敷居が低く、俺も楽しいよ。だから、謝礼は一切ない。(楽しい人に上げる必要はない。)
高齢者のメリット。どんどん引っ張り出す。のんびりしていては困る。
@ 高齢者は時間をたくさん持ち、しかも、こちらの都合に合わせてくれる
A 何らかの技術も持っている。ないと言う人でも、戦争など、生の体験を持ち、話してくれることができる。
B 子どもの育ちをゆっくり見つめてくれる。自分でやって見なと、あまり手出しをしない。
C 小銭を持ち、謝礼は要らない。逆に持ち出しをし、何かを作ってくれることもある。 

    
学校、教育改革の担い手である。一人でもやる気のある人がいればできる。子どもも喜ぶ。

「人材バンク」をなくした。人材バンクに登録し、活用しようと言うのは行政のおごった考え方、敷居が高い。登録していない人は行きづらくなる。子どもにとっての差別につながる。
例えば、A君のお父さんはいいな、学校に来ていろいろ指導をしてくれて。ぼくのお父さんは、家でごろごろ寝てばかりいる。家のお父さんだって、○○○ができる。登録していないと子どもが辛い。
私の母親の例〜学校からの回覧版で、人材バンクに登録してくださいという要請に。
私の母親の場合、教育心理を勉強していないから、ケガでもさせたら大変だから、私が病気になったら学校に迷惑をかけるるからなどの理由で、私が説得しても、書いたり消したりしている。登録した人だけで活動をしている、私の母のように、謙虚な人にも場を作ってあげる必要がある。

学校でソフトボールクラブを募集したところ、13人しか集まらなかった。(試合できないので活動できない?)運動不足だからちょうどいいというお父さん方が入ってくれた。  お陰でクラブは成立。大人と子ども入り混じっての活動。お父さん方はうまくなくてもいい。テクニックを教えなくても、バットを下げて、危ないよとか、良く捕ったねとほめてくれる人は見事な人財。 


「あいさつ通り」といって、見ず知らずの人に無理やりあいさつをさせなくても、このような関係にあれば、自然に言葉を交わすことができる。

町づくりといって、たまり場を作り、子どもをだしに遊んでいる。町の人にとっても、いいことにつながる。誰でも学校にいらっしゃい。


元気な大人が地域にいて、ハイキングの途中で、子どもたちが「家の大人っていいよね」って言っている。「秋津の大人っていいよね」って言われる、そんな町になったらいいね。


町の人と一緒にやるということは、たくさん失敗がある、いさかいを経験しているということ。きれい事で、うまく、すんなりはいかない。トラブルを乗り越えていこう、共有しようよ。


行政のやることは、お金を出して、動員して雛形、マニュアルを作る。お仕着せで長続きしない。できる人ができるときに、子どもが喜び、先生方に助かり、地域がよくなる。

新潟や池田小の例のように、日本全国で100万人の引きこもりの子をつくった。人と関われない青年たちをつくって来た。そういう若者を作らないために、今、融合で人との関わりをつくる。多 多様な人とのかかわりが、キレルとかムカツク子どもをつくらない。コ ュニケーションをつくる。


自然体験・社会体験など、たくさんの体験があるが、一番大切なのは「人間体験」で、学校でたくさん体験させること、さびしい人間をつくらないこと。
100万人のひきこもり、不登校だけでは責任がない。刃物を持ってはじめて責任が出てくる。人が人を育てる。人との触れ合いの中で育つ。


自分たちに地域の合った、こんなことしているんだよ、あんなことしているんだよという情報を発信したり、情報を交換したりしたいものだ。


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