《コーディネーター:岸裕司氏》
はじめに、図書環境についてお話をしたい。昨年12月に子どもの読書に関する法律が制定された。 (目的等の条文を紹介―略―)子どもの読書について危機的状況にある今日、国をあげて初めてできた。
全国に3,300の自治体がある。その中で公立図書館がない町村が2,000もある。書店がない町村も1,000ある。大人は本を得る機会はどうにでもなるが、子どもは本に接する機会がない。
学校図書館法において、全国の小中学校全てに学校図書館がある。今の状況においては、学校図書館の充実が望まれる。また、学校週5日制の実施された今日、土日の学校図書館の開
望まれる。(紫波町には土曜開放をしている先進的事例がある)
法律施行を受けて、文部科学省の施策で、今後5年間に650億円が地方交付税措置された。
私の仕事は図書目録作り、その中で、昨年度の紫波町の事例を全国に紹介した。
(公民館図書室と学校図書館のネットワーク化、学校図書室支援ボランティア、土曜日の学校図書館開放、いい本を選ぶ会などのこと)
《発表者:熊谷恵さん》
今日この会場に、初代から3代までの会長も出席している。今日の発表は、先生に任された子どものような感じです。
東和町は岩手の中央部に位置する、1万1千人の町です。私は東京生れで、昭和31年に東和に来ました。小さい町で小回りのきく所で、よそ者を受け入れてくれ、のびのび生活ができる町で もあります。私の主人は4年前に他界しました。子どもが2人いますが、ずっと東和で暮らして いきたいと思っています。
子育てで、いっぱい本を読み聞かせれば、勉強ができるという信念でたくさん読み聞かせをしました。勉強はそこそこでしたが、心豊かなやさしい子どもに育てることができました。読書を 通じて、子どもの心を一生懸命耕しました。
私の夢は子どもと一緒に図書館に行って本を借り、読んで聞かせ、また一緒に返すことでした。東和町には公民館図書室しかなかったのですが、そこで行いました。
図書に満足しきれない私たちは、平成6年の10月27日、町民の町民による町民のための図書館を考える「知恵の輪サークル」を結成しました。そして、町を動かし公立図書館ができるように願いました。
毎月の第二土曜日、情報センターでの映画会の前に、子どもたちの読み聞かせを行いました。あまり肩肘つかずにやろうということで、86回こつこつとやってきました。
小学校とか美術館に出前での読み聞かせのボランティアも、どんどん行っています。
平成8年に、家庭で眠っている本や雑誌(しかし捨ててしまうのは惜しい)を寄贈してもらって、コミュニセンターの2階に「貸し出し自由の文庫」を作った。(貸し出しは自由、いつ返てもいい、誰が借りてもいい)今では、土沢駅の待合室やホルクロード東和、東和病院、ふれあいセンターにも文庫を開いている。
この文庫を利用してくれる人は多く、感想ノートに、いつでもどこでも返す、便利でとてもいいことをしているねと励ましてもらっていることが心強い。
公立図書館ができないのだから、学校図書館を充実させる。自分の子が土沢小学校1年生に入学したとき、土曜日の授業終了後、本の読み聞かせを父兄の手で行わせてもらった。私の子が卒業した今でも続いている。良く受け入れてもらえた、これが学社融合の小さな歩みだと思う。
《コーディネーター:岸裕司氏》
この学校での読み聞かせは何校で行われているのですか。(東和町内に6小学校あるが、土沢小学校だけ)
習志野市では、17小学校全てで読み聞かせが行われている。もっと東和町でも広げられたらステキですね。(先生方もきっと困っていますよ)
《発表者:久川要氏》
昭和53年「子どもたちのために読書を」と、札幌市が制度としてつくった。
25年目になる学校図書館開放、きっかけは、子どもの読書離れを心配する、ある校長先生の話から、それをPTA会長(教育大の先生)が受けて、お母さん中心のボランティアを立ち上げ た。当時、社会教育サイドでも学校拠点ボランティアを作ってはつぶれを繰り返していた。両者が合意してできた。
PTA、地域住民が運営を担う。それを先生方が指導をする。教育委員会はお金を出す。運営 のリーダーに、各学校に、「開放司書」(ボランティア)を置き、若干の謝金を出した。開放司書は行事やボランティアの割り当てなどの調整役をした。毎年3校ずつ増えていく状況にあった。
学校の中でボランティアすることから、活動する場所(たまり場)を用意した。そしてPTAに限らず地域の人たち(老人、元父母など)に開放した。80歳のボランティアもいた。
先生ではない大人が学校にやってくる。すると子どもたちも図書館にくるようになった。本を読む以上に心のオアシスになった。
ボランティアにとっても、自分の子どもばからじゃなく、他人の子どもと相対視できるようになった。大人の学びと交流の場になった。
現在74の小学校と1中学校で図書館の開放が行われている。(札幌市の小学校数210、中学校100強)
ボランティアは、専門の司書の妨げになるのではないか、という意見に対して、図書館司書をボランティアが支えたらもっといい図書館になる。
開放図書館の目的を、読み聞かせ(読書のため)オンリーから、調べ学習と読書のための開放図書館にしていく。
開放図書館に、ボランティアOBも入って、さらに発展していくようにしたい。批判が起きても大丈夫なように研修をしていきたい。
《コーディネーター:岸裕司氏》
久川さんは、教育委員会の人間だった。土曜公開講座〜地域の方々を利用して、市民が行う。 子どもたちもやってくる。
文部科学省は、総合的学習の時間が始まり、調べ学習を重要視している。一方で学校週5日制になり、土日に学校図書館が閉まっている。矛盾しているのではないか。
《発表者:菅原和子さん》
図書館を考える会は、昨年5月のいい本を考える会きっかけに生まれた。「銀の鈴」や「おはなしの森」、「ほん太ネット」、「子ども気分講座」などの人たちが集まって、つくった。そして、富士大学の先生方を講師に、図書館ってなんだろうなどと勉強する会を月1回のペースで開 いている。会報も発行している。
昨年12月の子どもの読書に関する法律はすばらしい。図書環境は、ハード面ばかりではなく、人が大きく関わっている。本の数だけの問題ではない。
私は3人の子育て真っ最中の主婦である。(転勤族)行く先々で図書館や文庫があった。本を借りる場所であると同時に、ふれあいの場であった。本を借りるときのささやかな言葉がけがあった。(ていねいなレファレンスがあった。)
ただ本があればいいというのではない。加えて専門的知識をもった人やボランティアの人が必要だ。そして、知らない間に信頼関係が築かれ、心が開く。読書の習慣ができる。
4年前に紫波町に引っ越してきたが、町立図書館がなかった。公民館図書室では物足りない。そこで青森の杉の子図書館から絵本を25箱もらって、地区公民館で、お話会を開き、本の貸し出しをした。
平成12年の10月、公民館図書室と小中学校14校の図書のデータを共有し、ネットワークができた。学校図書館に、読書指導員(ほん太ネット)が、週2回入り、本の管理や手続き、運営補助、環境整備、修理、読み聞かせ、ブックトーク等を行った。
さらに、赤石小、古館小、紫波第一中の図書館を土曜日の午後、一般に開放をしている。同時にパソコンも貸し出し、地域のメディアセンターのようになっている。
《コーディネーター:岸裕司氏》
だれでもネットワーク化された10万冊の本を借りることができる。地域の人の手で、土曜開放 が行われていることも、大きな紫波町の特徴だ。
熊谷さんも菅原さんも「風の人」で、「土の人」ではない。この両者が折り合って創造するのが、「風土」という。女性のエネルギーが大きい。
自分の子どもの環境をよりよくしたい。それを、隣の子ども、町の子どもに広げて活動できる。生き甲斐になる。
一人でセロハンとはさみを持ち、図書の整理をするお母さんがいる。ボランティアは一人でもできる。
《会場:福島県郡山読書コミュニティ会長、庄司さん》
石川は2万人弱の町、公立図書館がない。
石川高校で、初めて朝読書に取り組んだ。今では、511校で取り組むようになった。
朝読書の全国大会を開いた。(読書活動が町おこしになる)はじめは、福島県のサポート事業の支援をいただいて、今年はゆめ基金(240万)を活用している。
基本理念は、あらゆる機会に、あらゆる場所で、読書のできる読書環境を整備する。
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